今は昔、今の福島県のある村のある家で猫が飼われていました。
 村人みなからもたいへんかわいがられ、とても長生きをしていました。
 ある日のこと、村の人がその猫を見るとしっぽが二股に分かれているではありませんか
 これが噂に聞く猫又だ。人をとって食うという猫又だ。
 村人はみんな恐れおののき、村中大騒ぎとなりました。
 なんとか追い出そうと村中で唐辛子を火にくべ、いぶしだしました。
 もくもくもくもく恐ろしい煙が村に充満し、
 猫はあまりの苦しさに村を出て行きました。
 村人はかわいそうとも思いましたが、恐ろしさには勝てませんでした。
 猫が居なくなってほっとしました。
 その後村ではもとどおり平和な時が過ぎていきました。

 しばらくして、そんな騒動とは無縁の北の湯
 一人のおばあさんがやってきました。
 みすぼらしい身なりで、目が悪いのかしょぼしょぼしています。
 私は身寄りもお金もありません。何でもします。おいてください。
 当時の館主は哀れに思い、またとても優しそうなので、
 働いてもらうことにしました。
 おばあさんは働き者で朝早くから夜遅くまで
 陰日向なく働きました。
 信心深いのか温泉神社を敬い、毎日掃除をし、大切にしました。
 目の湯の薬効もあってかおばさんの目はみるみるよくなり、
 ますます元気に働くようになりました。


 ある日のこと家族連れが北湯にやってきました。
 お風呂に入り、食事をし、楽しく過ごして、ぐっすりと眠りにつきました。
 家族のひとが明け方おじいさんがいないのに気づき館内を探しましたがいません。
 明るくなって、宿の周りを探すと、なんとおじいさんはずたずたに引き裂かれ

 大きな木の枝にひっかかっていました。
 人間業とは思えない惨状、あまりの恐ろしさに皆打ち震えるばかりです。
 聞いてみるとこの家族はあの猫又騒動の村からやってきたのでした。
 そして、その日以来おばさんはいなくなり、
 あの村の人々は現在も北温泉にはやってきません。
 


 さて、あのおばさんはどこへ行ったのでしょう
 いや、もう猫の姿に戻っているでしょう
 伝説では猫又は福島県の裏磐梯に移り住んだそうです。
 今、そこは猫魔ヶ岳と呼ばれ県内有数のスキー場としてにぎわっています。
 猫魔スキー場に行かれましたらばくれぐれも唐辛子など燃やしませんよう
 まあ、普通はそんな事しませんが


 これが北温泉に伝わる猫 ばっぱの伝説です
 ちなみに ばっぱ とはこの辺から東北にかけてのおばあさんの呼び方です
 親しみを込めた良い呼び方なんですよ
 さらに、ちなみに、おじいさんは じっち と呼びます。
 北温泉ではこれ以来しっぽの長い猫を飼ったことはありません。
 昔からネズミがいたので、猫は飼ってきましたが、しっぽの短い猫ばかりでした。
 でも、今居る二匹の猫はどちらもしっぽが長いんです。
 あまりにかわいかったのと、働き者だったので、例外を作ってしまいました。
 ミミーとティティです。
 どちらの猫もとてもみんなからかわいがられ、、今のところ怪しいことは無さそうです。
 人なつこいのでおいでになったら撫でてやって下さい。
 でも、やはり唐辛子にはお気を付けなされたほうがよろしいかと


 その後、時が経ち
ミミーは亡くなり新しくしっぽの短いモモがやって来ました。
 またかわいがってやってください。

モモ しっぽは少し短めです

じゃれて柔らかくかみついてきます

ティティ だいたい玄関にいます

当館の招き猫です